平成29年4月21日
精神保健福祉事業団体連絡会
代 表 伊 澤 雄 一
私たちは本年3月17日「精神保健福祉法改正の検討経過ならびに法改正に関する見解」を表明し、「障害者権利条約」に唱えられた世界観とは異質ともいうべき精神保健福祉法改正の方向感への異議、相模原市「津久井やまゆり園」事件を契機に、精神医療保健福祉を保安の道具として用いる法改正への反意、そして「重度かつ慢性」という新基準による、長期入院の固定化と地域移行支援施策の後退、さらに人として当たり前に暮らす権利を奪い、あらたな排除と差別を生むような方向性に対して、強く反対の意を唱えてきた。
現在、第193回国会で精神保健福祉法改正案が審議中であるが、国会審議に向け、厚生労働省は法案の改正趣旨文書のなかに「相模原市の障害者支援施設の事件では、犯罪予告通り実施され、多くの被害を出す惨事となった。二度と同様の事件が発生しないよう、以下のポイントに留意して法整備を行う」という一文を冒頭に掲げていた。
そして本年1月20日、安倍総理大臣の施政方針演説においても、「昨年7月、障害者施設で何の罪もない多くの方々の命が奪われました。決してあってはならない事件であり、断じて許せません。精神保健福祉法を改正し、措置入院患者に対して退院後も支援を継続する仕組みを設けるなど、再発防止対策をしっかりと講じてまいります」と法案の趣旨の部分と同様を述べ、精神保健福祉法の改正によって再発を防止すると強調していた。
ところが4月13日の参議院厚生労働委員会において、趣旨文書の下線部分(上記)が突然削除された。閣議決定を経て提案され、総理大臣の施政方針演説でも明言された内容が、委員会審議に至り削除されるという、前代未聞の事態である。
このことは、法案そのものが施政方針との整合を欠き、立法に至る審議の根拠を失していることを意味しているに他ならない。
したがって、趣旨を修正せざるを得ないような危険な法案審議は即刻中止し、法案そのものの廃止とともに、改めて、法案は一から検討しなおすべきである。
そしてその際には、精神保健医療福祉の制度活用をより一層当事者仕様のものとすべく、多くのユーザー参画のもとでの再検討であることを強く求めるものである。
【構成団体】
全国精神障害者社会福祉事業ネットワーク (全精福祉ネット )
日本精神保健福祉事業連合 (日精連 )
全国精神障害者地域生活支援協議会 (あみ :ami)